若き少尉の初陣

あとは夏休みをたのしみに待つだけ。天気より電気が心配。日本の電気はどうなるのか。

<読了>
「若き少尉の初陣」グレアム・シャープ・ポール 早川
新たな宇宙戦記物。宇宙軍一家の青年マイケル・ヘルフォートが主人公。
両親はすでに退役(これも訳ありっぽく今後の伏線か)して、その対立していた家系の子弟に嵌められ士官学校卒業時点から早くも障害に遭う。
この世界では、ピンチスペース航法という超光速手段と星系内の移動手段のマスドライバーによる方法があるらしい。マスドライバーは惑星上の航空機にも使われている。
主な攻撃手段はミサイルとレールガン。相対速度の大きさをエネルギーにした兵器で、あたりさえすれば甚大な被害が生じることを描いて見せる。
人類だけが(いまのところ)宇宙にいるようで、対するのは教義の厳しい宗教独裁国家ハンマー・オブ・クラア同盟。
星間連邦の技術を星間旅客船ごと盗んで、自国の経済発展に役立てようとするが、連邦も市民を誘拐されて黙っているわけも無く、奪還作戦が開始される。
とかまあ、ありきたりと言えばその通りなストーリーで、主人公マイケルとハンマーの要人の視点を移しながら進むが、正直冗長でだれる。
技術的な見所があるわけでも無く、帆船軍艦や戦記物を舞台だけ移した話なのに、人物の造形が浅い、粗い。ハリントンやロングナイフのほうが主人公が女性というだけでも興味が持てると言ったら、言い過ぎだろうか。

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煉獄の丘

「煉獄の丘」ウィリアム・K・クルーガー 講談社文庫
ミネソタの小さな町を舞台にした物語。コークの3作目。
浮気から醒め、家庭を取り戻したコーク夫妻。相変わらずサムのハンバーガー屋で働くコーク。製材所で爆発が起こり死者が見つかる。コークはまた事件に首を突っ込んでしまう。ジョーは夫の愛を確信できず、また過去の傷が現れることを気にしている。
一方、湖の過去の事件に囚われた男、ルペール。老朽貨物船の事故で弟を亡くし、凍り付くスペリオル湖を救命ボートで漂流し、ただ一人の生還者となった。老朽船の事故の原因が船主のフィッツジェラルドにあると思い、湖底に潜り貨物船の犯罪の証拠を探す。製材所はネイティブアメリカンのア二シナーベ族の聖地、「われらが祖父」と呼ばれる木を切ろうとする。対立する白人とアニシナーベの人々。製材所の爆発に続き、オーナーのリンドストロムを脅かす出来事にコークも巻き込まれていく。
コークが再び保安官に立候補することで、過去の過ちが知られることを恐れるジョー。妹ローズの言葉でコークとの信頼関係を取り戻す。
北米製材協会での演説に向くリンドストロム、彼を護衛すべくコークも行く。その留守にジョーがリンドストロムの妻、グレイス・フィッツジェラルドの相談に乗ったところで、次なる事件が起こる。
事件は事件としてきちんと解決されていくがその過程で、自然の精霊のような見えないものの存在が、感じられる。コークの幼いときからの知り合いでもあるア二シナーベ族の呪術師メルーがいい味を出す。
うれしいことにまだ読むものが残っていた。

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天冥の標Ⅴ

ゴールデンウィーク目前。こんなに寒くていいの?今年の夏は・・

<読了>
「天冥の標Ⅴ」小川一水 早川
2つの話が語られ、一つに交わりながら、実は大きな流れに関係していることを明かす。
ノルルカインの流れは試みはおもしろいと思うものの、読む身には少し辛い。
最後になって、生態系としての覇権戦略は読むに耐えるが、イーガンでも似たアイデアを読んだような気もする。もう少し語り口、ストーリーに工夫がほしい。
タックとザリーカの話は分かりやすいが、起伏に乏しい。読み終わると大きな流れに収まるのがわかるが、途中が少し物足りない。
ストーリーテリングの巧者たる小川一水も、作者のだけに見えている大きな流れが面白くて、その過程を急ぎすぎたのだろうか。
次作に期待したい。

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変死体

氷点下の最低気温が一気に2桁か。ストーブから扇風機に一足飛び。
桜も駆け足で咲いて散る春。

<読了>
「変死体」パトリシア・コーンウェル 講談社文庫
ケイ・スカーペッタのたぶん最新刊。軍の監察医務局に出張していたケイのところに、ルーシーとマリーノがヘリコプターで迎えにくる。
ケイが局長となっていて、いままで離れていたケンブリッジ法医学センターに、大きな事件になりかねない出来事が発生していた。
何か妙にモノローグっぽいケイの視点で物語は進んでいく。
残念ながらベントンと結婚した頃から、この話はおかしな筋になってきている。
いつの間にか登場上人物は何かしら精神的な、病的な傷を負っていて、不安定な
人々が多く登場するようになっていた。
犯罪者側にもケイの側にも揺れ動く人がいる。今までちっとも知らなかったような過去が語られ、それを紐解いていくという、ちょっと強引とも見える筋立て。そして今作は作者の文体が変わったせいか、いっそう居心地の悪いものとなっている。病的なといってもいいようなケイの独白。そして、ケイ自身と常連との感情的な対立。
正直読むのが辛い。読むに耐えないのではなく、話についていくのが辛い。
人を信じられないケイの孤独が、いっそう居心地を悪くする。
物語はよくできているのでしょうが、ストーリーやなにかより。、作者の書きた
い、そして中心に書かれているのは、ケイだけといってもいい作品に変容してしまったのが辛い。
次作は手に取るまい。たぶん、・・。

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ミラー衛星衝突

梅と桜が一緒に見られたおかしな春。

<読了>
「ミラー衛星衝突」L・M・ビジョルド 東京創元社
おなじみマイルズ・ヴォルコシガンのシリーズ。皇帝直属聴聞卿となったマイルズの久々の話。(といっても訳出のスケジュールの都合らしいが)
皇帝の結婚式の近づく中、花嫁の出身星コマールで、テラフォーミングのための太陽光反射衛星(ミラー衛星)が破壊されるという事故が起こり、マイルズと技術系の聴聞卿ヴォルシスの2名がコマールに派遣される。コマールに駐在するヴォルシスの姪の家にやっかいになり、事件を調べ始める。
30歳という若さで軍を退かねばならず、機密保安庁のエージェントから聴聞卿になったマイルズは、遺伝系の障害に強い忌避感を持つバラヤー人に、ここでも注目される。同年代の姪のエカテリン・ヴォルソワソンに惹かれるマイルズ。
ビジョルドは、障害とエロスにますます進むのかと、ちょっと心配。
さらに人妻である女性相手にと思っていると、マイルズとエカテリンの視点を交換しながら物語は進められ、あまりマイルズらしさを発揮させること無く、大団円を迎える。今回はマイルズが聴聞卿として「葵の印籠」のような力を楽しむのを、皇帝のそばに上がったせいで、大人に堕落したのかと思いながら、話につきあう。最後はマイルズの恋愛模様に少し期待を持たせながらエンディング。
見慣れた登場人物はマイルズだけだが、この世界観を全く破綻させること無く、話を紡いで読ませたビジョルドには、熟練したという賛辞は正しいかもしれない。
しかし一つの作品として、わくわくには欠ける。

でも次が出たらさっさと買うんだろうな。

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